街角10min

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014クルーズの旅
煌く星が手に届く
お気に入りのデッキチェアにて
もっと時間を持て余すと思っていた。しかし、今日という一日はあっという間だった。何をしたのかと問われれば大したことはしていないが、自宅で過ごす一日とは別もの。食べて歩いて、好きなときに本を読む。すれ違う人とことばを交わし、夕食は何にしようかと考える。
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街角10minとは… 旅のショートショート『街角10min.』 目の前で起こる偶然は、私だけのストーリー。旅先では、ひょんな出会いが、一生の思い出に…。ふと感じる、街角の数分間。 そんな、夢にも似た物語をお送りします。

013ハバナ(キューバ)
ハバナ
町のどこにいても、魅惑的な音楽が耳に心地いい。音調はゆったりとしていてゆるいムードだが、演奏は相反してアツく、ミュージシャンたちはいずれも真剣な顔つきだ。そして、それを聴く地元の人たちは、どうしても体を動かさずにはいられない。みるみるうちに周囲の皆が笑顔になって、リズムを刻んでいくのがわかる。  突然、地元っ子らしき若い男性が、近くで見物していた観光客であろう初老の白人女性の手を取った。
012ヴァレッタ(マルタ)
ヴァレッタ
「グッ・デイ!」  細い路地に入って建物の写真を撮っていたら、通りすがりのオジサマから声をかけられた。茶色い紙の買い物袋をふたつ持ちながら、ゆったりとした口調で。こちらも軽く手を振りながら「You too」と返す。さらにオジサマは、後ろにいた別の観光客らしき人にも同じように声をかける。その観光客は英語圏の人のようで、ひとことふたこと何かを言って笑って通り過ぎていった。
009サンフランシスコ(アメリカ合衆国)
サンフランシスコ
皮が固いパンに穴を開け、ボール状にくり貫いたお皿で供されるクラムチャウダーと、ずっしりと重たいカニサンドで胃袋は大満足。少し歩かなければ、すべてが身になってしまうのではとの恐怖に駆られつつ、フィッシャーマンズワーフの目抜き通りを、ピア39に向けて歩き出した。さすがは観光地。とても賑やかだ。
008バンクーバー(カナダ)
バンクーバー
プレートいっぱいに盛り付けられたロブスターを楽しんだあと、バニラアイスどっさりの巨大なアップルパイが運ばれてきた。これ、一人分? このままホテルの部屋に直行すると、間違いなく蓄積過多状態になる。夏のカナダは日が長いので、やはり今夜は外に出掛けようということになった。  昼の観光でスタンレーパークを巡った際、ガイトさんが面白いことを言っていた。ここは、ナインオクロックガンといって、その昔、沖で漁をする漁師たちに夜9時を知らせる空砲が撃たれていて、今でも毎夜行われているんです。それは、ダウンタウンにいても聞こえるほどの迫力なんですよ、と。ここにいて音だけを聞くのもいいが、実際に行ってみるのも面白そうだ。辺りは暗くなり始めている。20時35分、仲間とタクシーに乗り込んだ。
007カナディアンロッキー(カナダ)
カナディアンロッキー
バスを降りた瞬間から、すでにテンピークスの勇姿が見える。ビューポイントへの道程は岩だらけだが、そこを上り詰めると、青々としたモレーンレイクが凛とした姿を見せる。雲はまばらで、風はない。少々息が上がっていたので、ミルフィーユ状の地層がむき出しの岩盤に腰掛けて、しばしの休息。動くものはなく、おそらく何万年もこの風景のままだったのだろうなと、空想に浸ってみる。  視界にチラチラと動くものが飛び込んできた。リスだ。素早く動いては止まり、また動く。これはチャンスとばかりにカメラを取り出すと、岩陰に飛び込んでいって、姿を消してしまう。数秒後、こちらの様子を伺うようにそ~っと現れたかと思うと、わずか2メートルほどのところまで近寄ってきて立ちポーズ。前足をこすりながら、首を傾げておどけてみせてくれた。雄大なテンピークスをバックに、可愛らしい写真を撮ることに成功。ん〜、満足満足。
006アムステルダム(オランダ)
アムステルダム
中世の面影をそのまま残した建物が軒を連ね、人々はテラスで思い思いの時間を過ごす。少し歩けば、どこからでも運河と美しい橋が出現して、旅心を高揚させてくれる。そして、この風景をアムステルダムらしくしているのが、そう自転車だ。専用に設けられた駐輪場はもちろん、橋の欄干や街灯、街路樹に至るまで、頑丈なチェーンが掛かるところならどこにでも駐めてあって、それはこの街の風景にとっての重要なアイテムとなっている。自転車はどれも頑丈そうで、一見無骨に見えるが、この街並みとセットになると、途端におしゃれに見えるから不思議だ。
005ブリュッセル(ベルギー)
ブリュッセル
世界で最も美しいと称されるグランプラスにも、ショッピングアーケードのギャルリー・サン・チュベールにも、小さな路地裏のアジアン食堂に至るまで、多くのレストランやカフェにはテラス席がある。席に着いてのんびり。「腹を満たす」というより、「ひとときを味わう」という風情だ。右手を軽く上げてギャルソンを呼ぶ女性、デミタスカップを持ったまま新聞を読みふける初老の男性。地元の人も旅行者も、この至福の時間は譲れない。まるで、のんびり過ごす権利を主張しているようだ。しかしこの街には、のんびりせずに美食にあずかりたい人もいる。しかも、オープンエアで。
004ブルージュ(ベルギー)
ブルージュ
観光の目玉マルクト広場は、人でごった返している。ベルギーでもっとも古い、優美な市庁舎の前で記念撮影をするもの、高さ83mの鐘楼を肴に、テラス席でベルギービールを楽しむもの、馬車に乗ろうと値段交渉をするもの、おしゃれな自転車で通り過ぎるもの、などなど。屋根のない美術館と称されるブルージュは、中世がそのまま残された美しい街だ。服装は違えど、数百年前も同じような風景があったんだなあと、妙に感慨深い気持ちになる。
003ストックホルム(スウェーデン)
ストックホルム
噂には聞いていた。「T」のサインがあるビルの1階には、ギリシャ彫刻のような像がある。そこが入口だ。いきなり現れる、チェッカーフラッグのような模様が北欧らしい。改札でチケットを購入して、エスカレーターで下る。うっ、深い。壁には赤いフェンスが設置され、広告用ポスターが並ぶ。天井にはピアノの鍵盤のような装飾が出現。斬新だ。しかし、最初の踊り場に到着すると、様子はさらに一変した。ここは洞窟遺跡か、はたまた美術館か。剥き出しの岩盤に奇抜な装飾ペイントが施され、石像のようなものまである。地下鉄の駅に向かうという意識は瞬時に消えた。この先に地底湖があるのではないか、と思ったほどだ。
002ドゥブロヴニク(クロアチア)
ドゥブロヴニク
3つある城壁の門のひとつ、プロチェ門を入ってすぐの橋に差し掛かった瞬間「ここだ」と思った。素朴な旧港が広がる。聖イヴァン要塞の向こうにロクルム島が見える。要塞の先には可愛らしい灯台があって、ベンチがいくつか並んでいる。美しい。橋のサイドにある飾り窓から、その風景を覗いては笑う幼い女の子がいた。ちょっと楽しそうだったので、まねをして、飾り窓越しにシャッターを2度切った。あそこに行きたい。あのベンチに座りたい。あそこなら、きっとこの世界遺産をひとり占めできるはずだ。
001ポルト(ポルトガル)
ポルト
バスでの観光は済ませたが、車窓に映るあちこちが気になって、ポルトの街を歩いてみることにした。真っ先に歩を向けたのは、ドゥエロ川に架かるドン・ルイス1世橋。バスで通ったのは下の部分だったので、どうしても上に行きたかったのだ。  青く美しいアズレージョに心を奪われたサン・ベント駅を通り過ぎて、大聖堂を右に見ながら緩やかな上り坂を進むと、地下から突然線路が出現する。線路は間もなく橋の上へと顔を出し、対岸へと向かう。思いのほかかんたんに目的を果たしてしまった。対岸まで歩いている途中、ゴトゴトと走る地下鉄に追い越された。