ポルト

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微笑ましい親子の姿も
世界遺産の風景の一部

ポルト(ポルトガル)

 バスでの観光は済ませたが、車窓に映るあちこちが気になって、ポルトの街を歩いてみることにした。真っ先に歩を向けたのは、ドゥエロ川に架かるドン・ルイス1世橋。バスで通ったのは下の部分だったので、どうしても上に行きたかったのだ。

 青く美しいアズレージョに心を奪われたサン・ベント駅を通り過ぎて、大聖堂を右に見ながら緩やかな上り坂を進むと、地下から突然線路が出現する。線路は間もなく橋の上へと顔を出し、対岸へと向かう。思いのほかかんたんに目的を果たしてしまった。対岸まで歩いている途中、ゴトゴトと走る地下鉄に追い越された。

ドン・ルイス1世橋

 ドン・ルイス1世橋のたもとの川沿いには、たくさんのレストランが並んでいる。どうやらテラス席は人気のようで、空いた席はほとんど見られない。通りのざわめきと相まって少し暑いが、湿度は低く、風が気持ちいい。少し進むと、遊歩道の屋台に目が留まった。初老のおやじは、チョコレートでできた小さなカップを手に、通りすがる人に声をかけている。その前で、小さな子供が父親にわがままを言っているようだった。

 実はこの屋台、ジンジーニャというサクランボのリキュールを、チョコレートのカップに注いで提供する店。オビドスという街の名産リキュールだ。子供はチョコレートに反応している。それが食べたいのだ、と。すると父親は、紙幣を1枚おやじに渡し、注がれたジンジーニャを一気に飲み干したあと、チョコレートカップを子供に手渡した。子供は即座に首を振る。それじゃない、と。今度は店のおやじが、リキュールを注いでいないカップを子供に差し出す。すると、子供は満面の笑みを見せてカップを頬張った。父親も自分が持っているカップと同じだね、というジェスチャーをして笑顔でカップを口に放り込んでみせた。親指をキリッと立ててニヤリとした店のおやじは、数分前よりカッコいい。そして、その一部始終を見ていた若い女性4人組は、次々とジンジーニャをオーダーしていく…。

ジンジーニャ

文:

街角10minとは… 目の前で起こる偶然は、私だけのストーリー。旅先では、ひょんな出会いが、一生の思い出に…。ふと感じる、街角の数分間。 そんな、夢にも似た物語をお送りします。旅は、いいものですね。

ポルト
ドゥエロ川に架かるドン・ルイス1世橋は、1886年に造られた自動車と鉄道の併用橋。この橋を含む美しい風景は「ポルト歴史地区」として世界遺産に登録されています。
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