アムステルダム

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無骨なのにおしゃれに見える
自転車がある“らしい”風景

アムステルダム(オランダ)

 中世の面影をそのまま残した建物が軒を連ね、人々はテラスで思い思いの時間を過ごす。少し歩けば、どこからでも運河と美しい橋が出現して、旅心を高揚させてくれる。そして、この風景をアムステルダムらしくしているのが、そう自転車だ。専用に設けられた駐輪場はもちろん、橋の欄干や街灯、街路樹に至るまで、頑丈なチェーンが掛かるところならどこにでも駐めてあって、それはこの街の風景にとっての重要なアイテムとなっている。自転車はどれも頑丈そうで、一見無骨に見えるが、この街並みとセットになると、途端におしゃれに見えるから不思議だ。

アムステルダム 運河 自転車

 この国は、私たち日本人の想像を超えるほど寛容で自由で合理的だ。運河沿いの道路に自転車専用レーンが作れない場合は、自動車の方を進入禁止にして、自転車のための法整備をする。街の景観を損ねてしまうであろう放置自転車に目をつむり、結果アムステルダムらしさにしてしまう。実用的で排気ガスも出さず、世界的に見ても大柄で体力のある人々が平坦な土地にいるのだから、自転車がこの街の風景の一部になるのは、ある意味当たり前。中世の街並みや運河は他の土地にもあるが、これほどの自転車となると、やはり独特だ。

アムステルダム 運河 自転車

 花市場の帰りだろうか。前かごに花を入れて走ってきた女性が、花をそのままに、自転車を欄干に駐めてテラスに腰を下ろす。注文を終えると、やにわに分厚い本を取り出し読み始める。しばらくしてビールが運ばれ、給仕と言葉をかわしたあと軽くひとくち。また本を読み進める。
 友人とおぼしき女性が向かいの席に座ると、途端に賑やかな会話が始まった。身振り手振り、ときにはスマートフォンの画面を覗き見ながら。友人のビールが運ばれると、その給仕にも画面を見せて、何か自慢げなジェスチャーをしておどけてみせた。

 その間、何台もの自転車が目の前を通り過ぎ、何人もの人が駐めてあった自転車に乗って、次の場所へと走り去っていく。ふと気づけば、彼女が前かごに入れたままにしている花は、優しい日差しに照らされて、観光客の記念撮影の風景となっていた。アムステルダムの日常が、ここにも…。

文:

街角10minとは… 目の前で起こる偶然は、私だけのストーリー。旅先では、ひょんな出会いが、一生の思い出に…。ふと感じる、街角の数分間。 そんな、夢にも似た物語をお送りします。旅は、いいものですね。

アムステルダム
北のベニスとも呼ばれる運河と橋の街。近代化が進む一方、古くから海運の中心として繁栄してきた国際都市で、レンガ造りのその美しい街並みに見どころが点在するオランダの首都です。
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