ブルージュ

004

中世そのままの街で
フリッツにかぶりつく

ブルージュ(ベルギー)

 観光の目玉マルクト広場は、人でごった返している。ベルギーでもっとも古い、優美な市庁舎の前で記念撮影をするもの、高さ83mの鐘楼を肴に、テラス席でベルギービールを楽しむもの、馬車に乗ろうと値段交渉をするもの、おしゃれな自転車で通り過ぎるもの、などなど。屋根のない美術館と称されるブルージュは、中世がそのまま残された美しい街だ。服装は違えど、数百年前も同じような風景があったんだなあと、妙に感慨深い気持ちになる。

ブルージュ マルクト広場

 しかし、その中でも異彩を放つある子供の様子に釘付けになった。大人でも満腹になってしまうほどのフリッツにかぶりついているのだ。おそらく、鐘楼前にある屋台で買ったものだろう。マヨネーズのトッピングが人気だが、トッピングは無しのようだ。さすが、玄人は違う。左手で小さな弟にちょっかいを出しながら、右手では食べることはやめず、さらに両親にお裾分け。可愛らしいけど妙にたくましく、お世辞抜きに美味しそうな食べっぷりだったので、ついつられて鐘楼前の屋台に買いに行ってしまった。

ブルージュ マルクト広場 

 行列ができていたため少し待たされたが、念願のフリッツを手に入れた。一方、腹ごしらえが完了したらしい子供たち一行は、周辺の散策に出掛けるところだった。途中、手回しオルガンを披露する大道芸人の自転車とすれ違い、興味津々のごあいさつをしたかと思うと、運河沿いの道でカモの親子を発見しては、小声で何やら歌い出す。すると父親が合わせるように歌い、母親は軽くリズムを刻む。小さな弟は、父親の抱っこひもの中で、すでに夢の中…。

 チョコレートショップを見に行くはずが、ついつい、勝手に、ここまで来てしまったが、おかげで、素敵なシーンにめぐり会うことができた。
 たっぷりとあったフリッツも食べ終えたので、橋のたもとまで来たところで、マルクト広場に引き返すことに。すると親子は、中世そのままの街に溶け込んでいく。ここは、爽やかな空気が気持ちいい。

ブルージュ 旧市街 手回しオルガンを披露する大道芸人

© ベルギー・フランダース政府観光局

ひとくちメモ
フリッツとは、フレンチフライのこと。フレンチフライでも通じますが、ベルギーでは通常フリッツと呼ばれています。ベルギーはフレンチフライ発祥の地。ビンチェ種という専用のジャガイモを「二度揚げ」するのが特徴で、外はカリカリ、中はホクホクです。塩味がついていますが、一番人気のマヨネーズを筆頭に、ケチャップ、マスタードなど、20種類以上の中からお好みのソースを選ぶことができます。街歩きのおともにぜひ。なお、マルクト広場から徒歩約3分のところに、世界初の「フリッツ博物館」 www.frietmuseum.be もあります。

文:

街角10minとは… 目の前で起こる偶然は、私だけのストーリー。旅先では、ひょんな出会いが、一生の思い出に…。ふと感じる、街角の数分間。 そんな、夢にも似た物語をお送りします。旅は、いいものですね。

ブルージュ
ブルージュとはフランス語で「橋」という意味。縦横に走る運河には50以上もの美しい橋が架かり、その景観は「屋根のない美術館」と称されています。
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