ストックホルム

003

斬新な空間なのに
みな慣れっこ

ストックホルム(スウェーデン)

 噂には聞いていた。「T」のサインがあるビルの1階には、ギリシャ彫刻のような像がある。そこが入口だ。いきなり現れる、チェッカーフラッグのような模様が北欧らしい。改札でチケットを購入して、エスカレーターで下る。うっ、深い。壁には赤いフェンスが設置され、広告用ポスターが並ぶ。天井にはピアノの鍵盤のような装飾が出現。斬新だ。しかし、最初の踊り場に到着すると、様子はさらに一変した。ここは洞窟遺跡か、はたまた美術館か。剥き出しの岩盤に奇抜な装飾ペイントが施され、石像のようなものまである。地下鉄の駅に向かうという意識は瞬時に消えた。この先に地底湖があるのではないか、と思ったほどだ。ストックホルムの地下鉄ブルーラインKungsträdgården駅(クングストラッドゴーダン・王立公園駅)。天井は深緑色、床はエンジ色に深緑と白のストライプ、壁は剥き出しの岩盤。ホームも奇抜だ。ここは始発駅なので、青い車両が出発の時を待っている。その真ん中あたりに乗り込み、となりのストックホルム中央駅へと向かった。

ストックホルムの地下鉄 ブルーライン Kungsträdgården駅(クングストラッドゴーダン・王立公園駅)

 動き出して約1分半。となりのT-Centralen駅(T‐セントラーレン・中央駅)で降りる。今度は、青と白の世界。鍾乳洞のような鮮やかな空間が広がる。驚き、うろたえ、感嘆していたのはほんの数人で、多くの人は足早に乗り降りして目的地へ向かう。こんな斬新な空間なのに、みな慣れっこのようだ。

 小型犬を連れた初老の女性が声をかけてきた。スウェーデン語だろうか。理解することはできなかったが、その姿から「驚いたでしょう。気に入ってくれた?」と言っているようだった。私は大げさに肩をすぼめた。すると「GOOD」と2度繰り返し、穏やかな笑顔で小型犬とともにエスカレーターへと向かっていった。ほんの数分で足早な人の波は消え、鑑賞している観光客数人だけが残る。そしてもれなく、誰もがシャッターを切り始めた。

ストックホルムの地下鉄 ブルーライン T-Centralen駅(T‐セントラーレン・中央駅)

参考までに…
75分間、乗り降りが自由にできるシングルチケットが45クローナ(約500円・2019年1月現在)。ひと駅乗るだけを考えると割高だが、美術館の入場と考えれば割安だ。しかも、ユニークな美術館を地下鉄で「はしご」できるのだから。

文:

街角10minとは… 目の前で起こる偶然は、私だけのストーリー。旅先では、ひょんな出会いが、一生の思い出に…。ふと感じる、街角の数分間。 そんな、夢にも似た物語をお送りします。旅は、いいものですね。

ストックホルム
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